えりりんこと、前田恵理子さん

えりりんこと、前田恵理子さんの告別式に参列した。その知らせを見知ったのは、赤ちゃんに授乳した深夜のことだった。わたしは息を飲んだ。信じられなかった。おっぱいをゴクゴクと飲んで安心した赤ちゃんは、また静かに眠りに落ちていった。眠ることは潜ることに似ている。身じろぎもせずわずかな吐息に耳を澄ませながら、海の底はこんな感じだろうか、えりりんは今、深く深く眠っているのだろうか、そこは安心できて、穏やかな場所なのだろうかと思った。信じられなかった。

告別式に駆けつけると、懐かしい写真が、こちらを見ていた。明るく、溌剌としているあの笑顔だ。読経の声が響き渡る。何かの悪い冗談なのではないかと、呆然としながら、その顔をずっと眺めた。大学時代のえりりんは、いつもエネルギーに満ち溢れていて、どこか飄々としていて、そしてとても熱い人だった。そのエネルギーは、風を起こし、楽しく明るい場を作っていた。えりりんが場そのものだった。命は灯火に喩えられるけれど、えりりんのその炎は、人の何倍も強く、輝いているように思えた。皆と笑って過ごした時間は、私にとっても宝物だった。

美しい花々が、えりりんを囲み、線香の煙が漂っていた。小学6年生になるという息子くんが、お数珠を数えたり、お父さまの肩にうなだれたり、背伸びをしたりしていた。その度に、静かにしなさいとお父様に少し怒られるのだけど、お構いなしにしていて、それがなんだか私はとても愛おしかった。ママのあの天真爛漫で飄々としたカケラが宿っているようだった。かわいいな。えりりんが大切に大切に育ててきた宝ものだね。癌と闘い抜いて、孫の顔までみるんだと、記事に、えりりんが書いていたなと思い出したら、不意に泣けてきた。悔しかっただろうな。愛するご主人と息子くんのそばにもっといたかっただろうな。もっとやりたいことも沢山あっただろうな。癌を初めて見つけたとき、息子くんは、4才だったという。どれだけ辛かっただろう。どれだけ頑張っだろう。どれだけの苦難をこの人は乗り越えてきたのだろうか。そして、どれだけ周りに、英知と優しさと情熱と愛を与えてきたのだろうか。果てしなく。生きて、生きて、生き切った。紛れもなく。その精神は人々に受け継がれ、その情熱は人々の心をあたため続け、その眼差しは人々の心に残り、その魂は息子くんに宿っているのだろう。

読経が終わり、今日はお釈迦さまの命日だと、お坊さまがお話された。それで、お釈迦さまの亡くなる時の話を思い出した。常に寄り添い仕えた釈尊の死が近いと知った弟子のアーナンダは、「あなた様が亡くなられたら、私たちはどうすればよいのでしょうか」と、すがりついた。すると、釈迦は「自分自身を拠り所とし、ダルマ(法)に従いなさい」と仰った。自灯明法灯明。このことを思い出しながら、ぼうっと揺れる蝋燭の炎を眺めていると、また涙が流れた。えりりんは、本当に沢山の人のこころに火を灯した人だった。私はえりりんのように強くも立派にもなれないけれど、心に灯火を絶やさず、周りに感謝し、毎日を愛して生きてゆこう。

花を手向ける準備のため、少し部屋の外に出た。スカイライナーがすぐ近くに走るのを見ると、鉄道を愛する息子くんはすぐに追いかけて、「○○号だ」と呟いていた。すぐ近くにいたので、居ても立っても居られず、背中をなでた。何か気の利いたことばをかけたかったけれど、うまく話せなかった。その後もあちこち動き回っていた。最後はおかあさんの写真を持って立派に歩いていた。この元気な少年が、このまま元気に明るく育っていくことを切に願った。

花を手向けるときが来た。お顔を見たら、涙があふれ出た。安らかな美しいお顔だった。えりりん、本当におつかれさま。えりりんの身体も、おつかれさま。魂はもう自由に飛び回っているのかな。天国からFacebook更新してほしいな。どうぞ安らかに。ありがとう。

今日の言葉*

“どんな状況でも必ず進むべき道が見つかる。それは、やはり困難を乗り越えた経験が今の自分を作っていて、人生を諦めないからだと思っています。
もう一つ大切なのは、その辛い状況に溺れないこと。喘息の悪化で心身ともに追い詰められた高校3年時。うつ気味になり、命を絶つことを考えていたときがありました。でも1か月入院して酸素吸入治療を受けたことで体調が回復し、大学の現役合格に繫がったのです。
「自分は今、こんなに大変なのに」という自分本位の気持ちが先に立ってしまうとネガティブになって、人との関係も病気も悪化しがちです。自分の辛さにとらわれて視野が狭くなった経験があるからわかるのですが、辛さは一旦置いといて日常生活を継続し、仕事も家事も継続する。それが何よりもパワーを生み出し、生き抜くエネルギーになると信じています。”

前田恵理子さん

https://www.kateigaho.com/home/115662/

今日の音楽*


投稿日

カテゴリー:

, ,

投稿者: