夜桜

春分の日だというのに
雪が降った。桜はもう咲き始めている。
一度咲き出すと、我も我もと一気に花開く。
ちょいとまだ早いよ、待っておくれと
桜に話しかけては、見惚れる。

 

これは早咲きの種類だろうか。
ピンク色の花びらが美しい。
夜の静けさとよく合う。

ドイツに住む友人に、おすそわけと言って
写真を送ったら、4月に帰国するのに
間に合うかなと、焦っていた。
桜の開花前線は、自転車と同じくらいの
速度だと何かで読んだ。間に合うかな。

そういえば最近、自転車に乗っていない。
歩くのが楽しい。歩くのは生活に欠かせない
歩けるということは、なんて幸せなのだろう

ないものねだりはせずに
あること、できることに感謝して
毎日楽しもう。今日もてくてく。

今日の言葉*
ことしも生きて
さくらを見ています
ひとは生涯に
何回ぐらいさくらをみるのかしら
ものごころつくのが十歳ぐらいなら
どんなに多くても七十回ぐらい
三十回 四十回のひともざら
なんという少なさだろう
もっともっと多く見るような気がするのは
祖先の視覚も
まぎれこみ重なりあい霞(かすみ)立つせいでしょう
あでやかとも妖しとも不気味とも
捉えかねる花のいろ
さくらふぶきの下を ふららと歩けば
一瞬
名僧のごとくにわかるのです
死こそ常態
生はいとしき蜃気楼と

茨木のり子「さくら」


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