糸を吐く

 

シューベルト『即興曲OP90-4』 2010.07.04 

https://youtu.be/oDzAWrYR8UU

85歳のおばあさまが、
老人ホームで演奏
素晴らしいねぇ、、、

朝からしみじみ
音楽とは何かを考えさせられる
ケフェリックさんの演奏や音色も大好き。この方の演奏を聞いていると、心にしみいる音って織物を織るように静かに丹念に紡いでいくのだよなぁとあらためて感じる。蜘蛛が糸を吐くように。

今日の言葉*
夕焼けがないところでは言葉で夕焼けを作ることもできよう。死んだもののことは言葉で語るほかない。しかしこの瞬間に目前にある物を捕える力は言葉にはない。記述や描写や表現は、過去の事物と、遠方と、死者を語るためのものだ。言葉の積み木をいくら積んでも、この世界は作れない。世界というのは空や三檣帆船の雲、椰子、砂、珊瑚の中で巨大な地球儀の形に成育するサフラン色の珊瑚、木々を揺らす風、満天の星、岩の上に置かれた蟹のぬけ殻、すばやく走るヤモリなどであって、これらには過去がない。百万の言葉を組み合わせても、一本の木も作れない。だからぼくは、さっき書いたとおり、夕焼けを見ても言葉をもてあそばず、ただ精一杯の感激をこめてため息をつけばそれでいいのだ。

池澤夏樹「夏の朝の成層圏」


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