もうすぐ


かわいらしい花に挨拶した。
寒いねぇ。あたたかくなるとよいねぇ。

桜並木のつぼみは
少しだけ開きはじめていた。
新しい命の疼きを感じる。

春はもうすぐそこ。

今日の言葉*

「生命 ( いのち ) は 」吉野 弘

生命 ( いのち )は
自分自身だけでは
完結できないように
つくられているらしい
花もめしべとおしべが
揃っているだけでは不充分で
虫や風が訪れて
めしべとおしべを仲立ちする

生命 ( いのち )は
その中に欠如を抱き
それを他者から満たしてもらうのだ

世界は多分
他者の総和

しかし互いに
欠如を満たすなどとは
知りもせず
知らされもせず
ばらまかれている者同士
無関心でいられる間柄
ときにうとましく思うことさえも
許されている間柄
そのように世界がゆるやかに
構成されているのはなぜ?

花が咲いている
すぐ近くまで
虻 ( あぶ ) の姿をした他者が
光をまとって飛んできている
私も あるとき
誰かのための虻 ( あぶ ) だったろう
あなたも あるとき
私のための風だったかもしれない


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