子どもたちの遊ぶ声
池に反射する夕光
散歩する親子
舞い散る花びら
ここは極楽浄土かしらねぇと
友達とてくてく歩いた
生まれて間もないやわらかい
赤ちゃんを抱っこした
母親になったばかりのはずなのに
友人は、終始おだやかだった
洗足池というと、若林暢先生の
レッスンに通ったことを思い出した
女性らしいやわらかさ、しなやかさ
豊かさ、ふくよかさ、強さ、かわいらしさ
先生のいろんな魅力を思い出した
亡くなったなんて信じられないなぁ
今日の言葉*
ことしも生きて
さくらを見ています
ひとは生涯に
何回ぐらいさくらをみるのかしら
ものごころつくのが十歳ぐらいなら
どんなに多くても七十回ぐらい
三十回 四十回のひともざら
なんという少なさだろう
もっともっと多く見るような気がするのは
祖先の視覚も
まぎれこみ重なりあい
霞(かすみ)立つせいでしょう
あでやかとも妖しとも不気味とも
捉えかねる花のいろ
さくらふぶきの下を
ふららと歩けば
一瞬
名僧のごとくにわかるのです
死こそ常態
生はいとしき蜃気楼と
茨木のり子