音楽の神さま

生徒の卒業試験。固唾を飲んで見守るなか、想像以上の立派な演奏をして、はからずも、涙があふれてしまった。恐れや壁を打ち破り、全身全霊で舞台に立つ真摯な姿は、かくも心を打つものか。単なる上手い下手ではなく、まっすぐなエネルギー。尊い力と時間。ホールの隅々まで伝わったよ。おめでとう。

音楽の力、音楽の魔法、音楽の神さまというのが、舞台には必ず存在する。それを信じられるか、そこにふれられるかどうか、ふれられる自分であるか、開いているか。

そこに一度でもふれてしまったらやめられないものだ。きっと私も、やめられないから、続けているだけで。。ふれてないと辛くなる笑。

そして、舞台の上はもちろんのこと、音楽にふれるとき、鍵盤にふれるとき、弦にふれるとき、楽譜にふれるとき、本当はいつだって音楽の力、音楽の魔法、音楽の神さまはそこに存在するのだと思う。それを感じられたら、変なこわさはなくなる。それは、あまりに広く大きく豊かな泉だから。太陽がいつも雲の上にあるように、海が絶え間なく波を動かすように。演奏者は、媒介者だ。だからこそ「いかにふれるか」が大切で、「いかに未知に開いているか」がカギとなる。

皆がそれぞれ、学びの道を歩んでいるわけだけれども、真っ暗闇に思えるその先に、そのとびらの向こうに、見たこともない景色が待っているのだと、予感させることは、すこし先を行く人の役目であるようにも感じる。

卒業、おめでとう。

今日の言葉*

「問題は、どの視点を自分はいちばん得意とするかにつきる。そしてどの視点なら自分はオリジナルでありながらも、一般に理解できる説明ができるか、につきる。」

「大事なのは、集中力と客観性そして自分を信じる心だと思う。この、最後のやつがいちばんくせもので、永遠に終わることのない厳しい戦いとなる。」

(よしもとばなな)


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