ほんのりと香しく、花びらがハラハラと
舞っていて、足をとめた。すこし胸元のあいた
シンプルな白いブラウスを着る女性のようで
妙に色香がある。地面に広がる花びらも、
その花の影を映すようでとても美しい。
はて。
これは山茶花だったか、椿だったか。
花びらがハラハラと落ちるのと、
花がポトリと落ちるのがあるのだと去年知った。
どちらがどちらだっただろうか。
これはおそらく山茶花だろうという
結論にいたって、さよならをした。
11月だというのに、雪が降るかも
しれないという。どんどん冬が近づいてくる。
今日の言葉*
「死んだからだをていねいに扱うとき、
わしらの目それぞれが、死んだそいつの目になるんだ」
…
「見えない世界に、まっすぐ向けられた目だ。
生きたわしらに、その場所はけっして見えねえ。
けど、死んだ目を通して、そいつを感じとることならできる
そこがあると信じられるから、わしら猟師は、
鳥やけものに鉄砲を向けることができるんだろう。」
いしいしんじ「ポーの話」