デュポールさんと島根さん

大変素晴らしい会だった!!!
色々な意味で心動かされた。

デュポールの教則本。受験やコンクールの課題にも入っており、チェリストならば、必ず手にするとのこと。同じ弦楽器なのに、恥ずかしながら、デュポールのデュの字も知らなかった。(他の楽器のことももっと知りたいなぁという気持ちが高まった。) 

https://www.ongakunotomo.co.jp/catalog/detail.php?id=477010

1806年にパリで出版されたこの教則本は、試論と、練習曲の2つに大きく分かれる。これまでも、練習曲の方は出版されていたが、本来ならば、分厚い試論の方をまず丁寧に読み解かれる必要があるとのこと。それを、丁寧に訳したのが、島根さん!どれほどの時間がかかったのだろう!

訳者ご本人の生きたお話と演奏が聞けるのは本当にワクワクしたし、楽しかった。チェロの奏法のみならず、時代背景、歴史も、豊かに話が広がってゆき、フランス革命に翻弄されながらも、それぞれに生き残ってゆく作曲家や演奏家たちが、ありありと浮かび上がり、当時の世界に思いを馳せた。

「生き残ってゆく」

デュポールが当時確信を持って、遺した文章が、生き残り、こうして日本で日本語で読まれて、こういう会が開かれ、皆で読み解き、唸り、皮肉や冗談を交えて書かれている箇所でみんなでクスクス笑うだなんて、、、デュポールさん!思い描いただろうか!長い時を経て残されたものが解凍されてゆく。

演奏者はコックのように、紙に書かれた音符に火を与える必要があるけれど、島根さんは、まさにpassionの方だと感じた。ご自身が、使命を感じていらっしゃるかはわからないけれど、そういう使命、もしくは宿命で、これを翻訳されたのだろうなと感じた。それだけの器と情熱があるからこそ、その仕事が目の前にきたのだと思う。passionの語源には、受難という意味もある。受けとる力というのは、本当に大切な力だ。そしてそれに感謝する心。島根さんの言葉や音からは、これまで音楽を通して関わってつながってこられたたくさんの方々への敬意と感謝が滲み出ていた。もちろん、デュポールへの心も。それにわたしは感動した。

演奏では、passionだけではなく、spiritもより感じた。とても広い音楽で、とても心地よかった。もちろんお二人のアンサンブルも楽しかった!教則本とは思えなかった!

初心者でも、本に書いてあることを忠実に再現し、練習すれば、だれでも必ず上達する!という確信。そして、それをしっかり紙に遺すこと、伝えることの大切さ。これからの時代は、動画という媒体でも残っていくのだろうか??

デュポールさんは、親指の位置をどこにするのがよいのか?などなど、ひたすら具体的なことを徹底的に書いていた。すごい。わたしもチェロ弾いてみたくなった。弾けちゃうかも??(それには手が小さい…)そんな風に思わせて、すごい。

優れたhow to本で思い出すのは、世阿弥の「風姿花伝」。

“世阿弥の『風姿花伝』には「花は心、種は態なるべし」とあります。態とは技のこと、花の解釈は難しいのですが、人々が感じる素晴らしさや感動とも言えるでしょう。現代の演劇は、作品のテーマや作者の思いなどを「種」と考え、最初にそれをつかみ、演技を高めていこうとします。世阿弥の言葉は、それと真逆です。稽古を積み重ねることで技(種)を育み、極めていく。そうすれば、自ずと花(心)は咲く、という考え方です。

例えば、メソッド演技などでは「悲しい演技をする時は、過去の悲しかった出来事を想像すると涙が出る」と言います。共感することで思いを理解する。ところが、能の主人公は精霊や亡霊など異世界の住人ばかり。亡霊になったことのある人などいないでしょう(笑)。つまり、登場人物の思いを理解できないのです。

したがって、数百年前から脈々と語り継がれてきた「型」に頼るしかない。私にとっての型とは、作品にまつわる様々な要素が「圧縮」されたものであり、能を演じるとは、圧縮されたものを解凍する行為だと感じています。解凍するには、徹底的に技を磨き、型を身につけなければならない。そして、舞台で型を解凍できれば、数百年にわたり圧縮されたものが自然とあふれ出す。そのようなイメージを持っています。”

(能楽師 安田登)

引用:
https://www.academyhills.com/note/opinion/15102803artcollege_itoyasuda.html

デュポールもまた、「型」を遺した人なのだろう。「一部の超絶うまいひと」ではなく、「たくさんのきちんと弾けるひと」を育てるために、心血を注いだこの本は偉大だ。

感動!

今日の音楽*

今日の言葉*

「花は心、種は態なるべし」

世阿弥

◆これからの音語り◆

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2024.9/7(土) 本駒込 今井館

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