新しいメサイア終演!

メサイア無事終演

内容が濃すぎて、長大で(2時間半)さすがに、疲れた、、笑
新しいメサイアが産声をあげた!その出産に立ち会った!という
感覚がある(出産にしてはスピード安産だけど笑。)リハーサルから本番まで1秒も飽きることなく、ずっとワクワクしていた

冒頭のシンフォニア。

ふつうはもっと早く弾く。それをずっと遅く(とはいえ、確かに2拍子ではなく4拍子だ)。しかも、訥々と、表情をつけず、かわいた感じで、音を呟いた。かつて無人惑星探査機ボイジャーに、バッハの音楽を乗せたように、宇宙人に、地球の音楽を聴かせて分かるようにと。何かのシグナルのように。のばす音は、ため息っぽく。しかも、現代人のため息ではなく、紀元前のため息。これを曲のはじまりに入れることで、まさしく創世記のような雰囲気がぐっと出た。

「感情を乗せすぎないで。人間くさくしないで」というのは、天界とつながるシーンで、度々出てきたワードだった。

たとえば、メリスマは、ひとつの言葉をずっと長く歌う。ふつうは、結構揺らして歌う。でも、それをすると天とはつながれないから、もっと揺らさずにと。

さまざまなシーンで、この手法?が行われた。それにより、天なるものと、地を這うものや人間との、コントラストが、とても際立ったように思う。お能の世界では、表情をつけすぎると、「それは歌舞伎だ!」と、扇子が飛んでくるという話を聞いたことがある。そういうある種の「型」で示すというものに、似たものを感じた。それで、次元を変える。語法を変える。ナルホドと、唸った。

他にも、ふつうではない、ナルホドということが沢山あった。

たとえば、pifaは、普通大体綺麗に弾く。しかし「羊が自然に寄ってくるようにするにはどうするか?」との唐突な投げかけ。バグパイプみたいに、もっとベーっという音で(実際pifaというのはバグパイプのような葦の楽器?のようだ)。もっと草の匂いもするように。低音もゴーゴー鳴らしまくる。そして昼から夜にうつる。

ベートーヴェンの田園を弾いた時も、同じようなシーンがあり、山田さんは、やはり綺麗に吹かせなかった。それで、牛の鳴き声、糞や草のプーンとしたにおい、カウベルの音が聞こえるような田園風景が広がった。

「きれいはきたない、きたないはきれい」というマクベスの台詞を思い出す。

他にも、「とにかく痛い音にするにはどうするか?」という投げかけもあった。前代未聞のコルレーニョ(弓の木の部分で叩く)も試してみたが笑、最終的に駒寄りで音にならない音をヒリヒリと痛々しく引っ掛けるやり方で、マエストロ、ようやく納得笑。

「分断のイメージ」のところでは、すべてダウンボウ!チョキチョキと切られるように。結構大変だけど笑、これも効果的だった。

いたるところで、音楽が誠に生きるための創意工夫があった。それをワイワイ楽しく試せる現場も、とても貴重だった。

リハーサル中の、一言で面白いほど世界がガラリと変わる。少し変わるのではなく、ガラリと変わる。常識や概念がガラガラと崩される。思いもよらないイメージを引き出される。その連続。

一見丁寧に積み重ねられたジェンガの、ココしかないという木のかけらをツンと突かれて、総崩れになるようだ。もしくは、堅牢に見えた建築が、崩れ落ちるようだ。常識にとらわれず、どこまでも自由で、それでいて、音楽の肝を握っている。

「虚を突かれる」「盲点」「死角」、、

そういう一点を絶妙に突いてくる。

どうしてそれができるのだろう。私もそうありたいから笑、考える。ひとつには、常に、あらゆる視点から、音楽を見ている、見ようとしているからなのかもしれない。そしてこれが実は、音楽をするなら、最も大切なことなのではないか

どうしてこれほど音楽が生き生きとし、立体的になるのか?どうして一言でこんなに変わるのか??

頂上を目指すのに、あらゆる道を実際に歩いてみて、山を知り尽くしている。皆が歩く山道(太くて立派=常識)ではなく、草木の生えているところに踏み入れて、道を開拓し発見し続けている。そして山を雲から見下ろしてもいる。こんな道もあると、教えられる。確かにそこに道はあり、同じ山とは思えない、山が見えてくる。

今回も沢山のことを考えさせられた。。。

紀元前。人間が歌う前。そこから、一枚一枚ページを捲っていった長大な音楽ドラマ!!ラストの満ち満ちる光は、身震いするほど輝かしく、感動的だった。

コーロ・ヌォーヴォ合唱団のコンサートはこれまでも何度もご一緒させていただいており、何人かの方からお声がけくださり、お話しできて嬉しかった。みなさん、とても慈愛に満ちた歌声、そして素晴らしい表情をされていた。終演後、舞台裏で、涙をふく方も見受けられ、ウルウルしてしまった。長年、信頼関係が築かれている長岡聡季音楽監督が、コンマスを務められて、まさしく唯一無二のコンサートだったのではないか。

おめでとうございます!ありがとうございました!

最後に、帰り道で毎晩思い出しながら綴った、渾身のリハーサルmemoを再び貼っておこう笑。

リハmemo

・和音の変わり目でマグネットが吸い寄せられるように

・ハーモニーというのは、何かと何かをくっ付けるという意味が元々ある。

・火花があちこちに飛ぶように

・音階を、階段ではなく、はしごに

(階段だとスルスルいきすぎる。はしごにきちんと足をかける)

D Durは、死という意味もある

F Dur 母性(今回は、男の中の母性)

h moll 禁止されていた調 

・アルデンテ ペンネ アラビアータ 音の芯!

・天使 ガブリエル 勇ましく

・本番で一番うまく歌おうなんて、間違っても思っちゃいけない

・メリスマのときは、揺れすぎない。ひとつのことを言い続けている、天とずっと交信している感覚。揺れるとつながれない。

e moll 2回だけ。特別。

・羊が寄ってくるように弾くにはどうするか??

・昼から夜へ

・痛い音にするにはどうするか??

・フレーズの頂上にきたら、景色を見渡す余裕を

・きれいすぎる。音の中に、灰汁が必要。

C Dur 太陽

・断絶のイメージ。チョキチョキ。

・客観的に 分散和音を置いていく

G.P.をみなできちんと共有する

・全ての楽器と合唱がユニゾン。世界はひとつ〜

・世界をくまなく旅する〜(下降音形)

・縦に合わせない

・蛇みたいに。暗闇で地を這っている。暗闇の中でも生きている生き物のように。深海魚? 

・人が歌う前。紀元前のため息。現代人のため息ではなく。

・もっとさびしく、貧相に

・道路の建設

・休符ごとに、スマイル

・「ひ」!!!

今日の言葉*

「音楽は、人類の歴史では農業の開始より前からあった。控え目に言っても、言語が音楽より前にあったとする明確な証拠はない。実際のところ、物的証拠はその逆を示している。笛が人類最初の楽器とは思えないから、音楽は間違いなく五万年前の骨笛より古い」(西田美緒子訳『新版 音楽好きな脳』P326

https://x.com/honnoinosisi555/status/1695261908214198288?s=46&t=BTwYrO616pZeVCcQTVXilw

今日の音楽*


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