日本人製作家✖︎ヴィオラ

国立音楽院さん主宰のイベントに参加した。

2/4のコンサートは残念ながら行けなくなってしまったのだが、抽選で当たった音響テストを聞けた。大変興味深かった!勉強になった!音響テストで選ばれた4台のヴィオラがコンサートで使われるという面白さ、企画力。ワクワクした。

楽器というのは、弾き手がいなければ、無言なのだなと、至極当たり前のことが、やけに不思議に迫ってきた。弾き手によって、声を獲得するのだなぁ。あの大巨匠のハイフェッツが、演奏会後に「素晴らしい楽器の音色でした!」と言われて、楽器に耳を澄まして、「そうですか?何も聞こえない」というような冗談を言ったという話を思い出した。

製作家にとって、長い時間をかけて産み出した「我が子の声」を聞くのはどんな気持ちなのだろう。弾き手がいないと声を出せない。「可愛い子には旅をさせよ」で、沢山旅をしてよい弾き手と聞き手に出会わなければ、声も育たない。

身体・楽器・空間

この3つの楽器を鳴らせるかがよい弾き手だとずっと感じていた。よい奏者は、楽器だけでなく、身体も、空間そのものも鳴らせられる。音は、ふるえ。心も、ふるえ。

・開くと閉じる

よい楽器ほど、弾いているとこんな声なんだと、楽器の方から、話しかけてくる感じがした。弾き手との対話が生まれる。逆に、閉じてしまう楽器とは、弾き手との対話が生まれない。でも、ヴィオラは、楽器として、開き切ってしまうと、いけないんだなとちょっと目から鱗だった。開くと、閉じるの間の超絶妙なバランスをどの弦でも保っている楽器は、非常にヴィオラらしい音がした。当たり前だがヴァイオリンとはまた違う。

人間とも似ているなと感じた。人間の性格でも、オープンで明るくて社交的な人もいれば、シャイだけど実は話したいことがたくさんある人もいる。それに同じ人間でも人生経験によって性格(というより人格?)が変わっていくこともあるし、天気や場所によって、刻々と気分も変わる。それは生きものの特質で、人間も楽器も生きものなんだよなぁ、日々笑ったり泣いたりしている人間が楽器を弾くから魅力になるのだよなぁと改めて感じた。

よい楽器は、ずっと弾いていたくなる。それは、楽器から、どんどん話しかけてくるからだ。そのとき、弾き手は一番近い聞き手になる。そして、弾き手からも話しかける。対話が生まれる。楽器の声と、弾き手の心の声が、混ざり合ってそのうち本音を語り出す。楽器は人生の最高のパートナーとなる。

「開くと閉じる」は、より深く考えたいテーマだ。
寡黙な楽器、まだ声がきちんと出ていない楽器、生まれたての楽器は、ごくごく駒寄りでジリジリと弾いて、音を掘り起こしていく作業をしたりもする。閉まっている扉をこじ開ける、硬くなった身体のツボを押してやわらかくしていくようなイメージだ。あとは、ハーモニクス(ブラジョレット)をとにかくたくさん弾くと、音が出てきたりする。いずれにしても、畑を掘り起こすように、音を掘り起こす作業。

・音色とはなにか?

色そのものも美しさもそうだが、豊富さ、引き出しの多さのことを言うのだなと改めて。魅力的な楽器ほど、音色が単一、単色ではない。どれだけの色のパレットがあるか。それを引き出せるか?特にヴィオラは、明るさよりも暗さがどこかにないと、ヴィオラらしさが消えるのだと感じた。

これも新たな発見だったが、ヴィオラにおいては、A線(一番高い弦)が魅力的に鳴る楽器はそれほど多くないのだということ。特に下の方のポジション。逆にそこの音色やバランスが絶妙にとれている楽器は、全体のバランスもよく、他にない魅力と味があった。

・音量とはなにか?

響きの豊かさ、共鳴力、遠くまで通る音、倍音の豊かさだろうか。うまくことばにまだできない。すごい楽器は「そば鳴り」がせず、「遠鳴り」がして、いわゆる「底鳴り」がする。表板だけでなく、裏板も響き渡る。比較対象例として、イタリアの古い楽器も試奏されたが、音が出た途端に、部屋がワンワン鳴って驚いた。楽器はもちろんのこと、床まで振動していた。音は目に見えないが、物理的に、ふるえとして、身体にビリビリ伝わってきた。

あとは、音量というのは相対的なものでもあって、ごくごく小さな音も繊細に出せると、パワフルな音もより活きる。

うーん🧐面白かった😆

弦楽器ってやっぱり楽しい。一台、小さいサイズのヴィオラがあって、小さいサイズのわたくしも、思わず弾かせていただいた。(ずっと聞いていると、弾きたくてウズウズした。。。) いやー驚いた。ふだん、腕の長さが足りなくて😂調弦すらできないサイズのヴィオラが、ほぼヴァイオリンみたいに弾けるのに、出てくる音は紛れもないヴィオラの音!不思議な感覚で、脳がバグった。小柄な女性で、ヴィオラを弾きたい人のニーズがかなりありそう!

日本人の製作家さんが、切磋琢磨していく場で、それは後々の日本の音楽界を支えるものにもなり、素晴らしいなぁと感じた!

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